本研究の目的は、研究代表者が平成17年度に実施した「人工呼吸器装着筋萎縮性側索硬化症(以下、ALSと略す)患者の生きる営みの支援に関する研究」の対象患者50名を対象に、困難と対処と人生再構築の過程と要因を縦断的に明らかにすることであり、方法は、ライフ・ライン・メソッド(縦軸 : こころの状態、横軸 : 時間)を用いた質問票調査および半構造化面接調査を実施することである。 初年度は、前半に、在宅人工呼吸器装着ALS患者の生きる営みに関連する国内外の文献レビュー、ならびに調査の実施準備(インタビューガイドの作成、研究代表者が所属する倫理審査委員会での研究計画書の承認)を行った。後半には、倫理審査委員会での承認が得られた後速やかに調査を開始した。対象の抽出は、平成17年度の対象患者50名のうち、できる限り属性・療養環境・当時の心理状況などが偏らないよう厳密に行い、順次依頼を行い、承諾が得られた場合のみ調査を実施した。初年度は、合計23名に調査の依頼を行い、2名が辞退したため、合計21名の患者を対象に調査を実施した。辞退の理由は、家族の判断と家族の病気であった。調査の結果、過去3年間のラインの推移と変動要因、現在の属性、療養生活状況、身体症状、Hope、心の支えである人、喜びや楽しみ、願いと社会への要望が具体的に明らかとなった。 今後は、調査結果の分析、具体的にはインタビュー・データの質的分析および統計学的分析を進めるとともに、対象数を増やしていきたい。本研究の最終目的は、患者理解を深め、患者ニーズにみあった生きる営みに関する支援ガイドラインを作成することである。これまで、このような患者を対象とした研究がほとんど行われてこなかったなか、多くの問題や困難を抱えているこれらの患者を支援するための初めてのガイドラインの作成は社会的にも意義深くかつ重要性が高まっており、その作成が期待される。
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