研究概要 |
著者らの先行研究の結果をもとに,中国・四国地方の,病院の病棟に勤務する30歳以下の女性新人看護職のうち,暴言・暴力の体験がある者を対象にグループアプローチを行い,無作為化比較試験によりその有効性の検討を試みた.対象者を病院ごとに介入群と対象群に無作為割付けし,2010年4月に暴言・暴力体験の有無と外傷反応についてImpact of Event Scale-Revised(IES-R),DSM-IVの心的外傷後ストレス障害に関する4つの質問項目にて職場における暴言・暴力体験者を調査用紙にて抽出した.6月~8月に介入群に対して職場における暴言・暴力体験によるストレス,コーピングについて,暴言・暴力に対するストレスとうまく付き合う方法等の教育的介入,討論,行動療法(腹式呼吸,漸進性筋弛緩法,イメージ療法)を組み合わせ,安心感の共有,カタルシス,社会的適応技術,対人学習等を目的としたグループアプローチを週1回,90分/回,計3回(3週間)実施した.評価は,介入群,対照群ともに介入開始前,介入終了後,介入終了3ヶ月後の3時点で実施した.調査内容は,基本的属性,著者らが作成し,十分な内的整合性が認められたコーピング尺度,IES-Rであった.分析方法は,各評価尺度の得点変化量を従属変数とし,二元配置の共分散分析を行った.その結果,参加者は58名であり,有効回答者である介入群28名と対照群28名に割り付けた.体験率で最も多かったのは,先輩看護職からの暴言であり,コーピングに関しては,「気分転換」のみ,交互作用,主効果ともに2群間に有意な差が認められたが,「積極的行動」「認知的回避」「ポジティブ思考」「思い任せ」「トーキング」については交互作用,主効果ともに2群間に有意な差が認められなかった.そのため,今後は緩衝要因であると指摘されている認知についてグループアプローチを実施し,暴言・暴力を受けた女性新人看護職のメンタルヘルスの維持・向上に役立つ介入法の確立を行うことが必要であると考えられた.
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