研究概要 |
著者らの先行研究の結果をもとに,中国・四国地方の,病院の病棟に勤務する30歳以下の女性新人看護職のうち,患者・医療従事者からの暴言・暴力の体験がある者を対象にグループアプローチを行い,無作為化比較試験によりその有効性の検討を試みた.対象者を病院ごとに介入群と対象群に無作為割付けし,2011年4月に暴言・暴力体験の有無と外傷反応についてImpact of Event Scale-Revised(IES-R),DSM-IVの4つの質問項目にて職場における暴言・暴力体験者を調査用紙にて抽出した.6月~9月に介入群に対して職場における暴言・暴力体験によるストレス,コーピング,認知について等の教育的介入,討論,行動療法(腹式呼吸,漸進性筋弛緩法,イメージ療法)を組み合わせ,安心感の共有,カタルシス,社会的適応技術,対人学習等を目的としたグループアプローチを週1回,90分/回,計3回(3週間)実施した.評価は,介入群,対照群ともに介入開始前,介入終了後,介入終了3ヶ月後の3時点で実施した.調査内容は,基本的属性,著者らが作成し,十分な内的整合性が認められたコーピング尺度,The Japanese Version of Post-Traumatic Cognitive Inventory(JPTCI),IES-Rであった.分析方法は,各評価尺度の得点変化量を従属変数とし,二元配置の共分散分析を行った.その結果,職場において暴言・暴力体験のある女性新人看護職については,看護職からの暴言が最も多かった.また,患者・医療従事者からの暴言・暴力の体験がある看護職を介入群と対照群に割り付け,「自己に関する否定的認知」「出来事に関する自責の念」「世間に関する否定的認知」の全てにおいて有意に対照群の得点が高かった.また,コーピングに関しては,「気分転換」「トーキング」のみ,交互作用,主効果ともに2群間に有意な差が認められた.しかし,外傷反応は今回行った全てのグループアプローチにおいて低減がみられなかったものがあるため,今後は外傷反応の低減に効果がある介入法の確立を目指し,継続して長期間の介入を行っていくことが必要である.
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