本研究はヒトと相同な皮質構造を有するサルを用いた動物実験によって系列動作の企画過程の神経基盤を細胞レベルに即してその実態を明らかにしようとするものである。系列動作の企画過程には前頭葉の広範な領域が活動するが、課題特異的活動特性を有する各領域がどのような行動局面を反映し、かつそれらの特異的活動が見出される領域がそれぞれどのような機能的連関を有しているかについては十分明らかになっていない。本年度は系列動作の企画に関与する大脳皮質および皮質下諸中枢を探索するとともにそれら中枢領域の機能的関連を解析することで随意的な行動発現に必須の企画過程の統合的理解を目指した。このために計上された実験用防音室が導入され、実験動物の行動解析を含んだ総合的な実験システムが新規に構築され、神経活動記録実験が開始された。多点計測については克服すべき課題を数多く内包しているのでそれらのノウハウを蓄積するとともに、(1)垂直方向の電極の位置取りの高精度化(2)電極間隔の空間的高密度化(3)多電極刺入に伴う脳細胞への侵襲の低減を模索された。また、このことと密接に関連する実験研究として試行ブロック毎に可変長の連続到達運動を要求する行動課題のもとで特に大脳基底核に焦点をあてて解析を行ったところ以下の知見を得た。(1)複数標的提示期間の尾状核の視覚応答は標的数を反映して細胞活動を変化させるのみならず、一群の細胞群は特定の標的数に極めて高い反応選択性を有していた。(2)このような反応撰択性は指示信号によって明示的に連続動作を指示したときのみならず連続動作を記憶誘導性に行った場合にもみられた。上記の結果は平成21年アメリカ合衆国ハワイ島で開催されたThe NCM Annual conference等で発表された。
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