イルカにおける接触・同調コミュニケーションの発達を明らかにするため、伊豆諸島御蔵成島周辺に生息するミナミハンドウイルカの94年から98年までの個体識別調査用ビデオ映像から、接触をともなう社会行動の種類・頻度・持続時間・相手のデータ収集を行った。今後、これまで解析した99年から03年の社会行動のデータと統合して分析することで、個体ごとの年次行動変化を明らかにする予定である。 接触・同調コミュニケーションの進化の過程、社会性や生息密度の違いによる影響を明らかにし、進化の原因を考察するため、系統の異なる種間での行動比較を目的に、データ収集を行った。広島県宮島水族館において、スナメリの社会行動の目視観察及びビデオ撮影を行い、社会行動の種類・頻度・持続時間・相手、同調行動の精度(相手との時間差や個体間距離)・頻度・相手を記録した。その結果、スナメリは他個体との接触の際に背面を頻繁に使用することや、同調呼吸はあまり行わないことなど、これまで分析してきたミナミハンドウイルカやイロワケイルカの社会行動との相違点が見いだされた。また、イルカの野生状態での行動データを収集するため、ハワイ島沖に生息するコビレゴンドウを対象に、動物搭載型行動記録計(データロガー)の装着を試みた。その結果、水面付近での遊泳速度、体軸角度、ストローク頻度など、行動の詳細なデータを記録できた。今後、より長時間の装着を行うことで、社会行動のデータも収集できると考えられた。
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