本研究は、我々の開発する車体型BMI「ラットカーシステム」を用い、生体が長期間BMIに接続された際に生じる脳および身体動作の変化について、定量的な解明を目指したものである。本年度は、ラットを搭載したまま移動可能な懸架型車体を完成し、各種条件下における神経信号の特性変化を観察した。 この車体は高床構造を有し、床下にラット1匹を懸架できる。ラットには小動物用ジャケットを着用させ、ベルトを介して車体に拘束した。このとき、ベルト長を調整することで、(1)駆動系を停止した車体をラットが引いて歩行する状況、(2)ラット神経信号に基づき駆動される車体がラットを運搬する状況を実現し、それぞれ神経信号と歩行動作とを相関付けるパラメータの逐次的な観測を可能とした。 本システムを用いた結果、(1)では自由行動ラットの場合に比べて相関値のゲインが高まり、(2)ではラットの意図しない車体動作に対してパラメータの急激な変動が生じるなど、想定に矛盾しない特性が得られた。また、同パラメータの変動は接続開始から30秒程度で収束し、そのまま数分程度は維持できることや、電極の位置ずれや脳機能の可塑的変化等にそれぞれ対応すると思われる特徴的な変化を示すことが分かった。さらに、高床構造の車体に対しては駆動音の低減と動特性の改善を図り、長時間にわたってラットを安定して保持することが可能となった。
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