研究概要 |
本研究は,得られた時系列データを用いて,データを生成するシステム内の挙動の変化をとらえる変化検出問題に関するものである.特に,近年機械学習やデータマイニングの分野で議論される,大量データを扱うための方法論の観点から,従来統計分野で議論されてきた変化検出問題を捉え直し,データが持つ大規模性を明示的に考慮したアルゴリズムの導出と,更にその実装面からも考察し,効率的に実行可能な総合的な枠組みの構築を行う事を目的としたものであった.当該年度においては,まず,効率的に実行可能なアルゴリズムとして,近年提案された密度比推定に基づいた方法の導出を行った.この方法は,ノンパラメトリックな方法論であり明示的にモデルを与える必要がないため,柔軟で正確な変化検出を可能とする.また,このアルゴリズムのオンラインによる実装方法についても提案し,効率的に実行可能な枠組みを提案している.この方法に関する論文は,比較的レベルの高い,データマイニングに関する会議にも論文が採録されている.また,このテーマに関連して共同研究を行ったある企業とは,現在特許出願のための書類を作成中である.更に本研究では,当該年度および以前開発した方法を,宇宙機などの大規模な実機から得られた実データを用いた検証を行い,その有用性の確認を行った.変化検出は,工学システムにおける異常診断など,非常に応用性の高い技術であるため,本研究で得られた成果は,こういった応用のための基礎的技術として,重要なものであると考えられる.
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