研究概要 |
発生時期の脳内において神経細胞の極性形成の方向性ならひに神経突起伸長の方向性は細胞外からのシグナルにより厳密に制御されている。本研究では細胞外シグナルによるshootin1のリン酸化修飾とリン酸化shootin1が神経極性形成に及ぼす影響について解析を行うことで、細胞外環境からのシグナルを受けうる条件下での神経細胞の極性形成機構の理解を目指した。質量分析法を用いた解析から、shootin1の4箇所のリン酸化部位(Ser101, Ser233, Ser249, Ser375)を同定した。個々のリン酸化部位に対して非リン酸化型変異体および擬似リン酸化変異体を作製し、培養海馬神経細胞内で過剰発現し神経極性形成に及ぼす影響を解析したところ、Ser101およびSer249の擬似リン酸化変異体を発現する細胞では、軸索形成が促進されることを見出した。この結果はshootin1のSer101およびSer249のリン酸化が神経極性の形成に重要な役割を担うと考えられる。これらの部位はPAK1(p21 activated kinase 1)により直接リン酸化されることを、培養神経細胞およびin vitroの実験系により証明した。更なる解析を行うためShootin1のSer101およびSer249のリン酸化を特異的に認識する抗リン酸化抗体の作製を行い、細胞外シグナルによるリン酸化の変動について解析を行った。その結果、軸索ガイダンス分子であるNetrin-1の刺激によりshootin1のリン酸化が上昇することを確認した。以上の結果から、細胞外シグナル分子であるNetrin-1の刺激はShootin1のリン酸化を促進することで、神経細胞の極性形成を制御することが示唆された。
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