2009年度は、5月、11月、2月に、本調査対象校の2007年度入学生を対象とし、昨年度から継続の、第7回、8回、9回の追跡調査を実施した。2007年度入学生に関しては、1年生の3月から卒業直前の3年生2月の計9時点のデータがそろったこととなった。そこで、1年生の5月から3年生の2月まで計9回にわたり測定されたsense of coherence (SOC)スコア変動および、その変動に対して、成功経験としての主観的な成績評価、ならびに心理社会的学校要因として、学校帰属感覚における生徒からの受容的環境、教師からの受容的環境、所属感覚の3下位尺度がどのように影響するか探索をおこなった。Latent Growth Curve Modelでの結果、SOCスコア自体は、3年間ではU字型の曲線的変動が生じていることが明らかとなった。さらに、高校1年の3学期の教師からの受容的環境と所属感覚は、男女ともに変動曲線の方程式における一次項には正に関連をみせた。これは二次曲線の頂点をより早い時点に引きよせる傾向、すなわち下降傾向から上昇傾向に転じる時点を早める効果が考えられる。また、男女ともに両者は曲線方程式の二次項への負の関連をみせた。このことからSOCの急激な上昇的ではなく、より緩やかな変動をもたらす効果があることがわかった。さらに、男子においては中学3年生時に成績が良いと評価したものは切片に正の関連、一次項に負の関連、二次項に正の関連を見せた。これは、中学生時の成績が良いと、入学時のSOCは高くなるが、その後の下降傾向から上昇傾向に転じる時期は遅れ、急激な変化をもたらしやすい可能性が考えられた。以上より、高校生期におけるSOCの変動の実態とその変動を促す要因の一端が今回はじめて明らかになったと言える。
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