研究概要 |
我々はこれまでに、血管内皮細胞やラットにおいて高リン血症によるeNOSの不活化による内皮依存性血管弛緩因子(NO)産生抑制を、血管内皮細胞における高リン負荷実験において酸化ストレスが濃度と時間依存的に増加することを見出した。そこで、これらの結果がヒトにおいても同様であるか、またどの因子がより強く関与しているかを探索することを目的とした。 喫煙歴がなく、糖尿病や腎機能障害、心血管疾患などの既往のない健常男性16名を対象とし、二重盲検法交差比較試験で行った。試験食は、我々が行った高リン負荷試験(Nishida Y,et al.Kidney Int.2006;70:2141-2147)を参照した。対象者の身体所見(年齢、身長、体重、体脂肪率等)とFFQによる食物摂取頻度を調査した。試験は、早朝、試験食前空腹時、食後1、2、4時間後と翌早朝に、Flow-mediated dilation(FMD)測定、採血、採尿を行った。血清パラメーターとして、電解質(Na、K、C1、P、Ca)、動脈硬化関連因子(尿酸、TG、LDL-cho、HDL-cho)、糖代謝因子(インスリン、血糖値)、炎症マーカー(hs-CRP)は検査会社へ委託し測定した。リン代謝調節ホルモン(intact PTH、FGF23)、単球・マクロファージ遊走化因子(MCP-1)、酸化ストレスマーカー(8-isoprostane)、尿(P、Ca、NO、クレアチニン)はELISA法を用いて測定するためサンプルを凍結保存した。得られた%FMDと血清や尿中バイオマーカーの結果を、継時的な群間差、変化率、相互作用について多変量解析を用いて統計解析行う予定であり、健常人における食事性高リン血症による動脈硬化等の生活習慣病や心血管疾患のリスク低減に対する新規のバイオマーカーを同定し、適切な食事中のリン必要量もしくは摂取上限値を決定する。
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