現在、わが国の脳卒中による片麻痺者人口は、およそ140万人と推定されており、片麻痺者の多くは日常生活能力改善の目的で装具(補助器具)を装着し、生活するのが一般的である。しかし、国内外で普及している装具は、歩行を最大の目的としているため、歩行という機能面には優れているが、外観が悪く衣装と合わせた靴の選択ができないなど問題が多い。 本研究では、バイオメタルファイバーという人工筋肉を取り入れ、外観性と機能面を両立させた新概念の脳卒中専用バイオメタルソックスの開発を目的とした。 バイオメタルファイバーは一種の形状記憶合金として注目されており、通常はナイロン糸のように細く、しなやかであるが電流がバイオメタルファイバーに流れると、繊維が収縮するという特性をもつ。この技術は今後、医療分野において、さらに注目される領域の工業製品と思われる。 本研究のバイオメタルソックスが開発され、実用化されると、今まで屋外用と屋内用の2種類の装具と2サイズ分の靴購入を余儀なくされていた問題が解決されるとともに、ソックス型にすることで見た目ではわからないほど外観性を向上させることが可能である。また歩行動作中の転倒防止を行うことも可能であり、機能面と外観を両立させた新概念の補助器具となる。 本研究の成果としては、バイオメタルファイバーの特性を利用した機構を製作し、靴下型の人工筋肉ソックス試作機の開発し、機械的評価を終了したところである。今後は改良を重ね実用化に向けて臨床的研究を継続していく予定である。本研究によって、それまで日常生活を不憫に感じていた片麻痺者が満足した生活を送れると考えている。
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