本研究の目的は、「配慮<できる>身体」の育成を目指すスポーツ教材について実践的に考察することであった。中でも本研究においては、具体的なスポーツ種目として「シッティングバレーボール」に着目し、その教材としての意義を、運動実践を通して考察した。さらには実際の授業を実施することによって、具体的な教材化の可能性について考察した。21年度前期には、大学体育の授業へのシッティングバレーボールの応用を試み、改善プログラムを作成するための資料を得た。また、シッティングバレーボールチームの練習や各種大会に参加し、プレー場面を撮影しつつ実際に何が生じているかについて分析を行った。撮影に際しては、多数の日本代表選手が所属するチームから、日々地域の体育施設等で練習しているチームまで、幅広く依頼することができた。さらに、プレーする人々へのアンケート調査も実施し、申請者自身の分析の妥当性について検討する補助資料を得ることができた。これらの資料は、どれもシッティングバレーを授業の教材として扱うために有益であり、とくに「座って移動することの難しさ」からは、シッティングバレーに独特の技能があり、それに慣れるための動きづくりが必要であることが明らかとなった。このことは、シッティングバレーがまさに競技スポーツであることを物語っている。しかし、「座る」ことによって、怪我や障害を抱えて参加していることを保留し、「一緒にプレーする」ことを可能とすることも明らかとなった。シッティングバレーは、「すべての人を受け入れるためのスポーツ」と、「競技スポーツ(エリートスポーツ)」の中間点に位置するスポーツであると言える。今後、具体的な授業づくりを継続していきたい。なお、テーマに関わって原著論文を作成・投稿し、現在査読中である。
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