研究課題
本研究は、下肢不動化後の痛み行動の拡大に関わる神経可塑性機序の一つとして脊髄グリア細胞の動態に注目している。下肢不動化慢性痛モデルにおける痛み行動の発生期(1日目)、極大期(5-6週目)、減衰期(13週以降)の痛み行動の増減時の脊髄ミクログリア(OX42)、アストロサイト(GFAP)の活性化動態について免疫組織学的解析を中心に行った。これまでに、本実験モデルにおいて、固定部局所より離れた足底部の痛み行動が出現するギプス除去後1日目に、第4腰髄においてミクログリアの活性化が確認された。足底部の痛み行動が両側性に極大を示し、尾部まで拡大を示すギプス除去後5週目においては、第4腰髄においてアストロサイトの両側性の活性化が認められ、尾髄ではミクログリアの活性化が確認された。痛み行動が減弱を示すギプス除去後13週目においては、これまでに確認ざれた各グリア細胞の活性化は減弱傾向を示した。以上により本実験モデルにおける痛み行動の空間的・時間的変化に脊髄グリア細胞の変化および広がりが関連する高い可能性が示された。神経因性疼痛モデルの痛み行動は障害側のみであり、脊髄グリア細胞の活性化も障害側のみである。一方、本実験モデルの痛み行動は、両側性であり、遠位部の尾部にまで広がりを見せる。両側性の痛み行動を示す足部の髄節に当たる第4腰髄脊髄グリア細胞の活性化は両側性を示し、さら尾への痛み行動拡大に伴い尾髄グリア細胞の活性化も認められた。これらの相違から肢体不動化後に誘発される慢性痛と神経損傷由来の慢性痛とは、明らかなメカニズムの違いが想定され、新たな細胞内情報伝達系の解明および治療戦峰の創成が期待できる。
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