我々は、ヒト生体の反動を伴うダイナミックな身体運動中、筋肉の調整活動は腱の弾性を効果的に利用するために重要な役割を果たしている事を一連の研究で示し、弾性体である腱組織に注目している。骨格筋における筋部位に関する研究はこれまで行われてきたが、腱を始めとする弾性体に関する研究はあまり行われてきていない。本研究プロジェクトは、ヒト腱組織の形態特性を明らかにすることを目的としたプロジェクトである。H20年度は、超音波装置から得られた画像データを処理するプログラミングソフトウエアの開発と測定方法の検証を行った。開発したプログラムソフトウエアは、フィンランドのユバスキュラ大学神経筋機能研究センターで検証測定を行い、超音波映像の分析ソフトウエアとして利用可能であることを確認した。H20年度はこのソフトウエアを使って分析したデータをもとに、2本の論文を出版し、1本の研究発表を行った。また、下肢のアキレス腱と膝蓋腱長の計測方法を確立するために、信頼性・再現性などについて検証し、超音波映像からアキレス腱と膝蓋腱長、さらに両横断面積の測定方法を確立した。これらの方法を用いて、H21年3月から4月にかけて、12台の超音波装置(ALOKA社)を用いて本学学生(主に体育学部新入生)を対象に形態測定を実施し、800人を超えるサンプルを得ることができた。現在、それらのデータの分析を開発したソフトウエアで行っている。H20年度は、主に形態測定システムの開発を行うことができた。引き続き行うH21年度の研究プロジェクトでは、スポーツ大学という特徴を生かし、様々なスポーツ種目による筋腱形態の特徴を明らかにし、さらに筋腱形態の適応がスポーツの特異性として起きるのか検証していく。
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