本年度は、新規実験のセットアップとして、電子ピアノや筋電図計、アナログデジタル変換ボードなどを購入した後、初めはピアニスト、初心者3名ずつでプレテストを行った。そして、研究代表者が当初予定した実験計画の妥当性について十分な確認を行った後、被験者を拡充し、本実験を行った。実験の被験者に関して、ピアニスト間の運動パターンのバラつきが大きかったことから、当初予定した10名から15名に変更した。また、コントロール群に初心者10名に加え、アマチュアピアニスト4名を追加した。その結果、ピアニストと初心者のピアノ打鍵動作時の上肢運動パターンおよび動力学的な特徴に顕著な差が見られた。特に、研究代表者の仮説どおり、ピアニストは初心者よりもより多くの運動依存性の力を利用することで、筋肉の仕事量を軽減している結果が、肘および手首関節において見られた。これらの結果について、大阪大学大学院医学系研究科の木下博教授と十分な検討を加えた結果、被験者の一部に関してデータ処理を行った結果をまとめ、はじめに国際学会にて発表した。その結果、当該領域の研究者の間で高い評価を受けたため、その後、部分的な成果を学術論文としてまとめ、国際誌および国内誌に投稿し、査読を経て、掲載されるに至った。この際、ATR脳情報研究所の田中宏和研究員に、学術論文執筆に関するサポートを受けた。次年度はより詳細なデータ解析およびアマチュアとの比較を行うことで、申請者の仮説をより支持する結果が得られるかどうか検証し、得られたさらに詳細な結果を国際誌に投稿する予定である。
|