本年度は、昨年度の実験で得られた結果をより詳細に検証するため、以下のような追加実験を実施した。表面筋電図を新たに購入し、前回の実験で測定できなかった肘の屈筋(腕橈骨筋)の筋活動を、前回の実験で計測した他の関連筋群と同時に計測し、その発火特性および筋負荷量を算出した。また筋活動に同期して、打鍵動作時の上肢の2次元の運動を計測した。その結果、上腕二頭筋同様、腕橈骨筋でも、打鍵の開始に際し、姿勢保持の筋活動量の減少がピアニストのみで認められ、ピアノ初心者では認められなかった。さらに、今回得られたデータと昨年度得たデータに対して、さらに詳細な信号処理および統計学的解析を実施した結果、この姿勢保持の筋活動量の減少は、ピアニストのみにおいて、音量の増大に伴って増大すること、一方、肘の伸展筋の発火開始時刻は、初心者のみにおいて、音量の増大に伴って早くなることが明らかとなった。これらの結果をまとめ、身体運動制御学領域では最大の国際会議である「Society for the Neural Control of Movement」19^<th> Annual Meetingで研究発表を行い、当該領域の研究者たちと有意義な議論を行い、考察を深めた。さらに、研究内容に対し、若手研究者の中から選出されるScholarship Winner 17名の一人に日本人として唯一選出されるなど、国際的に高い評価を得た。その後、学術論文を執筆する上で、研究結果に対してさらなる推敲を深めるため、東京大学教育学部の平島雅也助教と、データ解析結果に対して有意義な議論を行った。
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