本研究の研究目標は、変異型SOD1蛋白質の凝集体が如何にしてALS発症に結びついているのかを解明する事である。20年度の研究において、in vitro大量培養系より精製した変異型SOD1蛋白質におけるアミロイド形成能の有無の検討を行ない、変異型SOD1がアミロイド線維を形成することが確認された。このアミロイド線維物はチオフラビン蛍光色素やコンゴレッド色素などのアミロイド反応性試薬に反応し、電顕による直接観察においても線維状の構造物となっている事を確認している。他の神経変性疾患の原因遺伝子産物と同様に、変異型SOD1蛋白質においてもアミロイド線維構造が形成される事は、非常に興味深い事象である。ただし、変異型SOD1蛋白質のアミロイド線維形成が毒性の発揮に対してどのように関連しているのかはまだよくわかってはいない。そこで、今後はin vitroで形成させたSOD1アミロイドを培養細胞等に導入するなどして、その神経毒性や細胞内動挙について調べていく予定である。 また、近年、アミロイドを形成させる原因蛋白質を酵母に強制発現する事により、様々な神経変性疾患酵母モデルが確立されており、その病態抑制(促進)因子のスクリーニングに応用されている。そこで、本研究では、凝集しやすくなった哺乳類細胞発現用プラスミドを模して酵母用に組換えることで、世界に先駆けて酵母のALSモデルを確立し世界に先駆けて酵母ALSモデルの確立を試みる。現在、変異型SOD1を発現させた酵母を作製したが、その発現量と凝集体形成の度合いが非常に低いため、酵母内で凝集を高率で作る条件の検討中である。
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