研究概要 |
本研究は,発達性吃音における構音プランニングの神経機構を明らかにすることである.構音プランニングとは,発話の開始や調節を行うために,構音器官(舌,喉頭,口等)の運動準備することである.過去の研究において,吃音者では構音プランニングに関連する脳部位であるBroca野や大脳基底核等の機能的異常が見つかっている.しかし,課題に単語や文章を用いた研究は多数あるが,これらの研究では,構音プランニングに関わる処理と語彙・意味処理を明確に区別できない.本研究では,低親密度単語を用いて,語彙・意味処理の要素を排除することで,構音プランニングのみに関わる神経機構が明確になると考える.発達性吃音と構音プランニングの関係を明らかにすることは,今後の発達性吃音リハビリテーションに対して有効な情報を提供すると考えられる. 本年度では,実験ための刺激を「NTTデータベースシリーズ,日本語の語彙特性の第1巻単語親密度」から抽出して,行動実験を行って,実験用の刺激を準備したうえで,非吃音者のfMRI実験を行った. 左利きの被験者を除外して,9名の右利き被験者のデータのみを解析した.コントロール刺激による賦活を引いて,親密度が高い単語,親密度が低い単語と無意味単語によって,両側の側頭回,紡錘状回,上頭頂小葉,下前頭回が共通に賦活した.親密度が高い単語による賦活と比べると,親密度低い単語の方が左の下前頭回(Broca野),左の上頭頂小葉,右の下頭頂小葉でより強い賦活があった.親密度が高い単語による賦活と比べると,無意味単語の方が両側の下頭頂小葉,視覚野でより強い賦活があった.無意味単語と親密度の低い単語による賦活には有意差がなかった.この結果から,Broca野は構音プランニングと推測できる.
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