研究概要 |
本研究は,発達性吃音における構音プランニングの神経機構を明らかにすることである.構音プランニングとは,発話の開始や調節を行うために,構音器官(舌,喉頭,口等)の運動準備することである.過去の研究において,吃音者では構音プランニングに関連する脳部位であるBroca野や大脳基底核等の機能的異常が見つかっている.しかし,課題に単語や文章を用いた研究は多数あるが,これらの研究では,構音プランニングに関わる処理と語彙・意味処理を明確に区別できない.本研究では,低親密度単語,無意味単語を用いて,語彙・意味処理の要素を排除することで,構音プランニングのみに関わる神経機構が明確になると考える.発達性吃音と構音プランニングの関係を明らかにすることは,今後の発達性吃音リハビリテーションに対して有効な情報を提供すると考えられる. 本年度の業績としては,発話時に脳の左下前頭部がどのように賦活しているかを調べ、従来の欧米での知見では単語の親密さに応じて2つの処理経路があると言われていたことに加え、日本語の特性をうまく利用することで、非単語の発話に際してはさらにもう一つの経路が賦活するという新発見をした。さらに、吃音者の脳では従来言われていた2つの経路が機能不全を起こし、第3の経路のみで発話しているのではないかという画期的な発見と考えられる。これらの成果は今年の米国神経科学大会で発表する予定である.
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