高齢者における日常生活の質を低下させる根本的要因は、無意識のうちに進行する筋萎縮による筋機能の低下である。筋萎縮のメカニズムの解明は、その科学的根拠に基づいた早期予防、リハビリの有効性および効果判定、新しい運動処方の開発の基盤として必須である。筋は非常に可塑性に富んだ組織であり、筋線維タイプの変化という質的変化も認められるが、そのメカニズムには不明な点が多い。本研究では、動物モデルを用いて筋線維タイプと運動神経をバイオイメージングにより可視化し、この分子機構を解明することを目的とした。 平成21年度は昨年度から引き続き、速筋線維(IIb型線維)を選択的に発色させる遺伝子改変マウスの作製を行い、作製したマウスの観察を行った。遅筋線維が豊富なヒラメ筋、速筋線維が豊富な足底筋を採取し観察した結果、足底筋での選択的なmCherryの蛍光発色を確認した。また微視的な解析から、IIb型のミオシン重鎖タンパクを発現する筋線維が選択的に発色していることも確認し、遺伝子改変マウスが首尾良く作製できたと考えられた。National Institute of Healthから入手した遅筋線維(I型線維)を発色させる遺伝子改変マウスにおいても、I型線維に選択的なYFPの蛍光発色を確認した。現在、マウスの表現型を解析中であるが、今までのところ、筋を含めて病的な異常は認められておらず、wild-typeと同様に、これらのマウスを利用して筋の質的変換を解析することが可能であると考えている。さらに、これら2つの遺伝子改変マウスを交配させ、速筋線維と遅筋線維が選択的に発色するマウスを作製中である。
|