バイトクロックに基づくパケットスケジューリング機構の高度化として、既提案のギャップパケット方式に加えて高精度タイマ方式の実装を行い、10ギガビットイーサネット環境における評価を行った。高精度タイマ方式はOSが高精度タイマをサポートしている必要はあるものの、イーサネット以外にも適用可能な他、既存のQoS機能と組み合わせることで、優先度制御や階層的な帯域制御など、計画当初予定していた高精度かつ柔軟な設定が可能である。実験の結果、両方式ともハードウェアTCPオフロード機能によって最大64KBのバースト送信は発生するが、実用上は問題ないスケジューリング精度を保てること、高精度タイマ方式はCPU負荷がより小さいことを確認できた。さらに本パケットスケジューリング機構の応用展開および成果の普及として、まず本技術をデータ配信サービスに適用するための手法を検討し、トラフィック制御設定を自動化するソフトウェアシステムを開発し、平成21年7月より商用音楽配信サービスにおいて運用を開始した。その結果、システム構築費用の削減、オペレーションの省コスト化が評価され、次世代サービスでの利用も決定している。また帯域保証型分散ストレージシステムPAPIOの要素技術としての利用を検討しており、その予備評価を行った。これらの研究成果として、電子情報通信学会ネットワークシステム研究会で2件の発表を行った。開発成果物はGNU GPLライセンスに基づくオープンソースソフトウェアとして公開済みであり、商用利用にも耐え得るソフトウェアとして国内外の研究者・開発者に普及させることができた。
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