平成21年度には、ハイブリッド型音楽推薦システムの拡張および高精度化のための技術開発を行った。従来、音楽推薦のための確率モデルは、楽曲インデクスなどの離散的な特徴量を直接扱うことができるが、音響的特徴量などの連続値を扱うためにはVQなどであらかじめ離散化しておく必要があった。しかし、音楽の様々な特徴量は多次元実数ベクトルで表現できることから、自然な方式とは言えなかった。この問題の解決を図るため、確率モデルにおける音楽特徴量の出力分布を離散分布ではなく混合ガウス分布とすることで確率モデルを再定式化し、学習アルゴリズムを導出した。さらに、大規模データを扱う場合に過学習によって推薦精度が低下する問題に対処するため、ユーザやアイテムのクラスタリングやガウス分布のパラメータタイングなどのスムージングを行う手法を考案した。実験の結果、音楽の連続特徴量を適切に扱うことができ、高精度な推薦ができることが確認できた。これらの研究成果は、音楽情報処理分野のトップ国際会議であるISMIR2009にて登壇発表を行った(投稿212件中38件)。現状では、平成20年度に開発した音楽推薦インタフェースと合わせて、ユーザ間のインタラクションを促進する音楽推薦システムの下地ができた。今後は、確率モデルの複雑さを自動で推定するようにする改良や、より実際的なWEBインタフェースへの実装に取り組むことが重要である。
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