本申請課題は、金属ナノ構造をシングルナノメートルオーダーの間隔で積層させた積層型金属ナノ構造体を作製する手法の開発、及び作製した構造体の光学特性を明らかにすることを目的として研究を行っている。本年度はまず、下層の金属ナノブロック構造体を作製する上で重要となる基板のエッチング条件、及び金属膜のスパッタ条件について検討を行った。シリコン基板上に電子線描画用ポジ型フォトレジストをズピンコートし、横 : 40nm、縦 : 200〜450nmの構造パターンを300nm間隔で30マイクロメートル四方の領域に描画した。現像後、ICPドライエッチング装置によって基板を深さ40nmエッチングし、その後スパッタ装置によって金を39nm、SiO_2を1nm成膜した。最後にレジスト膜を剥離することで構造体を得た。エッチング及びスパッタによる成膜の条件の最適化を行うことにより、構造表面のラフネスが1nm以下の金属ナノ構造体をシリコン基板内に形成することに成功した。またSiO_2のスパッタ時間を制御することで、作製した構造上面と基板表面との高低差を1nmの精度で制御することが可能であることが明らかとなった。次に、金属ナノ構造体(横 : 40nm、縦 : 200〜450nm、高さ : 20nm)をSiO_2層をはさんで張り合わせた構造の光学特性についても検討を行った。挟み込んだSiO_2層の高さを1〜8nmの範囲で変化させたときの構造体の透過スペクトルを測定した結果、SiO_2層が高くなるにつれてプラズモンピークが短波長側にシフトし、スペクトル幅も小さくなることが明らかとなった。これは上下に配列した金ナノ構造体間において、プラズモンによる静電的な相互作用が誘起されたためであると考えられる。次年度においては、金属ナノ構造間の相互作用の詳細なメカニズムの解明を目指す。
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