本申請課題は、金属ナノ構造をシングルナノメートルオーダーの間隔で積層させた積層型金属ナノ構造体を作製する手法の開発、及び作製した構造体の光学特性を明らかにすることを目的として研究を行っている。本年度はシリコン基板上に2つの金ナノブロック構造にSiO_2層を挟んで積層させ、さらに化学エッチング法を用いてSiO_2層を選択的にエッチングすることで、ナノギャップを有する積層型金ナノ構造体を作製し、そのプラズモン分光特性の解析を行った。エッチング前後の構造体のプラズモン共鳴スペクトルを計測した結果、ギャップ形成に基づいて共鳴スペクトルが短波長シフトすることが明らかとなった。これはSiO_2層が一部除去されたことによる誘電率の変化と上下の金ナノ構造間の電磁的な相互作用が増大したためであると推察される。さらに、これらの構造体が示す光電場増強効果について、金の2光子励起発光計測により検討を行った。フェムト秒レーザー光(中心波長:800nm、繰り返し周波数:82MHz、パルス幅:120fs)を顕微鏡用対物レンズで構造体に任意の強度で集光照射したときに観測される金からの発光スペクトルを測定した結果、金からの発光由来のブロードなピークが観測され、その発光強度はレーザー光強度の2乗に比例した。したがって、金ナノ構造からの2光子発光が確認された。積層型ナノギャップ金構造のエッチング前後、及び2次元的に配列させたナノギャップ金構造の2光子励起発光強度をそれぞれ測定した結果、エッチングによりナノギャップが形成されることで発光弾度が増大すること、そして2次元的に配列させた構造よりも積層型構造がより高い発光強度を示すことが明らかとなった。
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