研究課題
若手研究(スタートアップ)
2008年度では南太平洋遠洋性海洋堆積物試料を用いて日本原子力研究開発機構研究炉JRR-3MおよびJRR-4においてINAA法、PGA法を適用した多元素分析を行った。これらの手法から得られた30-36元素の定量値を多次元ベクトルと見なし、供給源に合致する元素濃度パターンの抽出を行う独自の統計処理を含めた多変量解析によって、堆積物に含まれるオーストラリアならびにニュージーランドから風送されるレスの寄与量を過去20万年の堆積年代の間で推定することが出来た。2009年度では前年度で対象とした南太平洋よりもさらに南方にある南極海遠洋性海洋堆積物を研究対象に用いた。INAA法およびPGA法を用いた多元素分析を適用すると同時に堆積年代別の海洋環境を評価する目的で^<57>Fe Mossbauer分光法を用いて堆積物に含まれる鉄の状態分析を行った。詳細な検討の結果、スコシア海堆積物表層(5.0kyr)に四極分裂値が極めて大きいダブレットピークを有する鉄化学種を確認し、この化学種が初生的な海緑石中に含まれるIII価鉄に由来するものと推定された。近年のスコシア海堆積物は海緑石を局所的に生成させる強い還元的環境下にあったことが示唆されることを明らかにした。
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