研究概要 |
本年度は,2007年石川県能登半島地震災害の被災地である輪島市,2007年新潟県中越沖地震災害の被災地である柏崎市を対象とし,被災者生活再建支援業務を担当した実務者へのヒアリング調査を実施した.この中で,BFD (Business Flow Diagram)という業務像を可視化する記述言語を用いて業務運用実態の可視化を行なうとともに,業務運用上の課題を洗い出した.大きな課題として,被災者を抜けもれ落ちなく,的確に把握するためには,一元的な台帳管理が求められることが示された.これは本研究が目指すべき被災者台帳の構築の必要性を意味していた.このヒアリング調査の結果に基づき,被災者台帳の設計を進めてきた.被災者台帳は災害発生後において「被災者の実態」を的確に捉え,被災者生活再建支援メニューを適切に選定するための基盤となる.これは被災後にゼロベースで構築するのではなく,市町村が平時から管理している基盤台帳(住民基本台帳,固定資産課税台帳,市民課税台帳)を効果的に援用し,必要に応じて情報を追加していくことが,現実的な解となった.住民登録外の被災者に関しては,適切な市の認定プロセスを経て,被災者台帳へ追加される仕組みとした.これらを基盤として,各被災者生活再建支援業務が進められていくなかで収集される被災者に関する情報に着目し,適切なリレーショナルキーとして被災者番号・被災世帯番号を設定し,一元的な被災者台帳の設計を行なった.この被災者台帳を空間参照型とするためには,被災者に関する位置情報を付与する必要がある.位置情報の付与については,被災後に自治体が進める「建物被害認定調査」の結果を「被災建物の所在地」として位置情報化し,各被災世帯の情報と結合することで,台帳全体に位置情報が付与される結果となった.本年度を通して,被災者に関する情報を一元的に管理するためのデータベースの設計と,業務の流れを確立した.
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