研究概要 |
本年度は,継続的な柏崎市へのヒアリング調査を行ない,空間参照型の被災者台帳がどのように利活用されたかを分析した.この分析により,被災者生活再建過程における各種の行政業務の業務量とその日別推移が明らかとなった.業務量の推移状況を「継続期間」「ピーク時回数」に着目して分類したところ,「短期で終わる」「長期にわたる」と「ピークが単数回」「ピークが複数回」の組み合わせによる4つのパターンが見られた. この分析を通して,生活再建支援は「被災者世帯」に提供されるものの,支援の対象要件として「建物被害」が用いられていることに起因する「被災者同定の課題」が明らかになった.被災者世帯は平常業務内での対象となる住民の世帯構成と異なる場合があること,建物被害は「居住建物被害」であり「居住建物」がどれであるかは被災者しか判断できないことから,被災者生活再建支援を進める上で,それらを被災者から把握し,改めて被災者の同定を行なわなければならない.前述の業務量の推移からも,被災者の同定が的確かつ迅速に進まないために,業務が長期にわたるケースが見られた. そこで,本年度を通して,「被災者台帳」を活用し,「被災者確定業務を効率化」する手法を構築した.2004年新潟県中越地震,2007年能登半島地震,同年新潟県中越沖地震において被災者生活再建支援を中心的に実施した担当者へのヒアリング調査を行ない,課題の同定,解決策の検討を行ない,新しく「被災者確定業務」の基本モデルを構築した,このモデルでは,業務フローを示すとともに,その中で処理される情報項目を特定し,情報処理過程も明らかとした. この基本モデルは,各基礎自治体の事情にあわせてカスタマイズすることで利用することができる.これまで,被災自治体での経験者のみが暗黙知として蓄積していた対応経験を,このようなモデル化を通して,次なる災害に備えるための「知恵」として形式知化できた.
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