研究概要 |
無変形状態では電気絶縁体である窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を対象として,軸方向引張/圧縮および半径方向扁平変形に伴う電気特性変化を第一原理計算を用いて解析した.解析は,直径が大・中・小の3つの単層BNNT,直径大+中および中+小の2つの二層BNNT,直径大+中+小の1つの三層BNNTについて行った.軸方向変形では,引張ひずみが大きくなるほどバンドギャップが低下したが,その変化量は半径方向扁平変形に比べて小さかった.また,二層と三層BNNTの軸方向変形に伴うバンドギャップ変化は,最内層を構成する単層BNNTのバンドギャップ変化にほぼ等しかった.半径方向扁平変形では,単層BNNTのバンドギャップは変形に伴い指数関数的に減少し,その減少量はチューブ直径が小さくなるほど大きかった.直径大+中の二層BNNTのバンドギャップは,扁平変形に伴い単層BNNTと同様に単調減少したが,その減少量は単層よりも大きかった.一方,直径中+小の二層および三層BNNTのバンドギャップは,変形初期に増加し,その後減少に転じた.扁平変形を受ける多層BNNTにおいて,バンドギャップが単調減少するか増減するかを決定する因子は,最内層BNNTの直径であり,ある臨界直径よりも小さければ増減する. 以上をまとめると,BNNTをナノ絶縁被膜として利用する際には,直径が大きい単層BNNTを用いるべきであることが明らかとなった.一方,変形負荷によりBNNTをナノ電子デバイスとして利用する際には,最内層の直径が小さい多層BNNTを用いて扁平変形を与えることにより,バンドギャップの増減を制御できることが明らかとなった.本研究成果は,BNNTを利用する際の設計指針を与えるという点で,学術的のみならず工業的にも意義あるものである.
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