研究概要 |
近年,超高比表面積を有するナノ材料の新規基幹構造として,ナノワイヤー材料が基板に配向固定化されたナノリーフ(ナノ珊瑚)が大きな注目を集めている,これまでに,バイオ分析,高性能太陽電池,超高活性熱・光触媒の応用を目指してTiO_2ナノリーフの合成が盛んに検討されてきた.しかしながら,既報の合成手法は,数100℃以上の高温を要する気相合成や,液相合成であってもオートクレイブといった加圧反応容器が必要であったり,多段階の合成ステップを必要とするなど様々な問題を有していた. このような背景の中,今回の研究活動によって,液相,100℃以下の低温でアナタースールチル接合型TiO_2ナノリーフのワンステップ合成法を見出した.合成は,一般のガラスサンプル管に,硫酸チタニルの過酸化水素水溶液を調製し,そこに基板を入れて80℃で18時間行うというシンプルなものである.本手法は低温プロセスであることから,ガラス,ポリマー薄膜,ITO,普通紙,布といった非常に広範囲な基板にTiO_2ナノリーフを合成することができた.さらにこの形成メカニズムについて検討したところ,反応初期にアモルファスチタン酸化物が土台層として基板に成長後,その上に芝層となるルチルナノワイヤーが成長し,土台アモルファスは長時間の熱処理でゆっくりとアナタースへと変化していることがわかった.今回見出された手法は,土台層と芝層の反応時間が大きく異なるために,それら2つの反応を取り出してそれぞれを別で進行させることが可能である.そこで,あらかじめTiO_2ナノリーフを固定化した薄膜に,さらに芝層のみを成長させる反応を繰り返し行ったところ,ナノリーフの構造をより階層的に制御することに成功した. このナノリーフの特性として水に対する濡れ性を評価したところ,水に完全に濡れる挙動を示した.これはナノリーフの微細な凹凸構造をマクロな現象として反映した結果であり,超親水性薄膜として様々な応用が期待できる.
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