研究概要 |
本課題においては,精密に構造制御した磁性材料の創製による新規バイオ分析の確立,また自己組織性を付与した磁性ナノ粒子の開発を試みたが,磁性材料の合成が非常に困難であった.そこで,別材料でのバイオ分析システムの構築を目指して,バイオ分析へと応用可能な表面プラズモン共鳴を示す金ナノ材料の合成を目指した. 本課題の具体的な成果として,1.非平衡系において形成される散逸構造を利用した金ナノ材料の合成に成功し,2.ナノ彫刻法というこれまでにない新しいナノ材料創製法を開拓した.1の項目については,これまでマクロなサイズでしか報告されていなかった散逸構造が,ナノや分子レベルでも存在することを世界で初めて明らかにすると共に,この散逸構造を利用することで,既存の平衡系における材料合成法では得られない特徴的な構造を有する金ナノ結晶を合成できることを報告した.具体的には,金錯体と四級アンモニウムカチオンが水/有機溶媒界面を介して水中で一次元集合体を形成し,これを光還元することで中空構造を有する金ナノワイヤーが得られた.2の項目については,結晶の成長とエッチングを原子による自己集合と解離現象であるとそれぞれ捉え,これまでそれぞれ独立してナノ材料の合成法として利用されていた手法を,意図的に同時に進行させるナノ彫刻法を開発した.具体的には,水中,高分子溶存下において,金イオンの光還元による金ナノシートの形成反応のプロセス中に,溶存酸素による金結晶のエッチングを同時に進行させた.その結果,花冠状金ナノシートやナノプロペラといった,これまで報告例のない金ナノ構造体を得ることに成功した.これらの金ナノ材料について,表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサーの開発が期待できる.なお,上記の研究成果について,外国雑誌や新聞等によって数回報道された.
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