研究概要 |
本研究の具体的研究項目は,1.ポートフォリオのリスク量の高精度推定,2.リスク寄与度の高精度推定,3.証券化商品のリスク管理への応用である. 1に関しては,昨年度,VaR(Value at Risk,バリューアットリスク)とES(期待ショートフォール)の間に成立する一般的な関係式,および工学分野で有名な鞍点法を用いてESを推定する方法を考案した.本年度は,昨年度と異なるリスク計測モデルを用いて数値的に検証を行い,ESの推定値が既存手法による推定値よりも精度が高くなるという結果を得た.2に関しても,昨年度考案した,VaRとESの間に成立する一般的な関係式および鞍点法を用いてESのリスク寄与度を推定する方法の精度を,昨年度と異なるリスク計測モデルを用いて数値的に検証した.その結果,既存研究の結果に比べて格段の精度向上が見られた.特に,リスク寄与度には加法性(全資産のリスク寄与度の総和がポートフォリオのリスク量に一致するという性質)があるが,これまでの推定法ではその加法性が大きく崩れる場合があったが,提案手法ではそのような場合は見られず,加法性が精度良く成立することも確認できた. CDOなどの証券化商品の価格はESの推定値と深く関連するので,上記の成果がCDOの価格付けおよびリスク管理に応用できることは明らかであるが,それを実証的に示すことは本年度中に完結せず,残念ながら投稿には至っていない.しかし,学会発表において,これらの成果は特に実務家から興味を持たれた. なお,本研究に関連するものとして,証券化商品と金融危機について,雑誌やシンポジウムで解説した.
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