本研究の目的はPKCεを標的とした阻害活性を持つ新規低分子化合物を作出し、2型糖尿病態への治療効果を検討することである。具体的には、PKCεの活性化に必須のアダプター蛋白質であるεRACKとの結合阻害により薬効を期待する。以下の実験系を用いて薬効を評価する。初年度は、以下の実験系を組み立てることを試みた。(1)組み換え体を用いたIn vitroでのPKCεとεRACKとの蛋白質相互作用を見る系。(2)哺乳類培養細胞におけるPKCεとεRACKとの結合および膜への移行を見る系。始めにバキュロウィルスで作出したGST-PKCεと大腸菌で作製したεRACKを使った蛋白質相互作用を試みたが、Pull-down assayでは強い結合は確認できなかった。また、Native-PAGEによる実験系も試みたが、蛋白質相互作用を確認することはできなかった。しかしながらBiacoreを用いた蛋白質結合解析によってPKCεとεRACKとの結合が確認でき治療薬候補の化合物をスクリーニングすることができた。引き続き実験系の洗練し再度スクリーニングする予定である。培養細胞を用いた実験系では、PKCの活性化剤であるPMAにより培養細胞を刺激し、細胞質と細胞膜分画に分離後、ウェスタンブロト解析によってPKCεの細胞膜への移行を検討した。293TやCHO細胞でPKCεの細胞膜への移行が確認でき、治療薬候補の化合物のスクリーニングを行っているところである。スクリーニングの途中ではあるが、PMAによるPKCεの細胞膜への移行を阻害する化合物が幾つか確認できている。今後、再現性を確認し、次年度の研究計画へと発展させる予定である。
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