研究概要 |
アイカメラを用いた先行研究によれば,事故反復者はハザードの発見が遅いことが明らかとなっている.従って,事故反復者のハザード発見遅れを診断し改善する必要があるが,アイカメラは高額かつ,使用や分析に専門知識を要するので,多くのドライバーに診断・教育を行うためには,より簡便な方法を用いる必要がある.そこで本研究ではハザード発見のタイミングをマウスクリックによって取得するソフトウエアを開発し,アイカメラで測定したハザード発見のタイミングと,マウスクリックにどの程度の整合性があるのかを検証した. 自動車の運転席から撮影した40場面の刺激映像をPCモニタに映し10名の実験参加者に7秒間ずつ見せた.実験参加者には刺激映像中の危険だと思う対象をなるべく早くクリックするように求めた.開発したソフトウエアはクリックの座標とその座標にあったハザード,刺激提示開始からクリックまでの所要時間を記録した.実験参加者の注視行動はアイカメラを用いて記録した. 記録されたアイカメラの出力映像をフレーム解析し,実験参加者がクリックした対象を最初に注視したタイミングを記録した.全ハザードで初回注視時間とクリック時間の相関係数を算出したところ,0.80であった.また,初回注視後すぐにクリックした対象のみの相関係数は0.96であった.なお発見〜クリックの平均遅れ時間は,全体で1397ms(SD=1010ms),初回注視直後のクリックで979ms(SD=451ms)であった.ハザードの発見とクリックとの間には高い相関関係があり,画面上のハザードをマウスクリックすることで注視行動取得の代用とすることが可能であると考えられる. 今後は模範データとなる優良運転者のクリックタイミングのデータを蓄積し,事故反復者と比較する必要がある.また,効果的なフィードバック方法も検討する必要がある。
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