本研究は、ラオス・サヴァンナケート県における森林変化とその要因の検証を、各種の衛星画像や地形図等のGISデータの分析(GISベースの研究)と、現地レベルでの生態・社会的実態の観察・聞き取り調査(現地ベースの研究)を併用して進めていくものであり、平成21年度は特に、現地ベースの研究を主に進めた。 具体的には森林タイプを分類するために、植物被覆度・林相・林床部・土壌・植種などの総合的な調査(毎木調査)を行った。これらの情報は、現状における森林劣化の実態を把握し、かつリモートセンシングデータとのリンクにより、それらの広域(サヴァンナケート県全体)の規模と分布を明らかにするために不可欠である。20年度に購入したALOS/AVNIR-2衛星画像を前分析した結果に基づき、7~8月、10月、12月の三度、サバナケット県内において広域なグランドトゥルースと、数十点でのコドラート調査を行った。コドラート調査の内容は、毎木調査、魚眼写真による樹冠撮影、林床植生調査、林床バイオマスとリター量計測、土壌調査である。 21年度はまた、これらの調査結果とALOS/AVNIR-2衛星画像をオブジェクトベース分類結果の整合性を見た。オブジェクトベース分類では、画像を様々な特徴によって分割(オブジェクト化)する。分割された各オブジェクトはピクセル輝度の平均値、均一性、エントロピーといった面的統計量を使って分析できる。コドラート調査で得られた各森林タイプのパラメータと、上記面的統計量を主成分分析したところ、研究のまず大きな目的であった県全体の森林現状の正確な把握の見通しが立った。画像からの現在の正確な森林タイプ分類とその分布図を作成し、所属研究機関で所有するCorona衛星画像との重ねあわせが進めば、研究において当初計画していた森林破壊の規模と要因分析に大いに貢献する定量的データが得られることになる。
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