研究課題
当該年度では、簡易渦集積(REA)法による測定装置の構築を行った。REA法は、風速の鉛直成分の符号に付随して高速動作電磁バルブでOn-off動作制御を行い、サンプルの捕集、分析を行う。開発装置は、センサー部、サンプリング部、計測部、演算部から構成されている。センサー部では、風速の鉛直成分を三次元超音波風速計により測定する。サンプリング部では、対象物質は超微小粒子であるためメタルワーヤースクリーンを用いる。捕集時間とサンプリング流量をそれぞれ30分と15L/minとし、サンプリングは手動で行う。ここで、本研究でのサンプリング条件では理論的には50%透過率の粒径は4.3nmで、1nmの粒子の捕集効率は99%である。また、トレーサーとしてラドン(Rn-222)壊変生成物を用いるため、計測部ではラドン壊変生成物からのアルファ線をZnS(Ag)シンチレーションカウンタにより計数する。ここで、アルファ線の計数を1分間隔で60分間行う。演算部では0.1m/sの閾値を設定し、風速の鉛直成分が閾値より大きい場合は風が上向き、それより小さい場合は下向きとし、二方電磁バブルに信号を送りそれぞれの方向に対するサンプルを捕集した。フィールドによる動作チェックでは、風速の鉛直成分の符号に付随したサンプリングを行うことが可能であることを確認し、フラックスの計算に用いる測定値(風の上下方向におけるエアロゾル濃度差や鉛直風速の標準偏差等)を得ることができた。ここで、気象条件によっては大気中ラドン壊変生成物濃度が検出下限値以下になり、今後の課題として測定精度に寄与する捕集量やスクリーンのブランク値等についてさらなる検討が必要であった。粒径が数nmの大気エアロゾル粒子の乾性沈着に関する知見はほとんどないため、本研究では超微小粒子の大気-陸域の物質交換に関する環境動態解析に必要なデータの取得が可能になり、その研究成果は大気科学や環境科学に重要な知見を提供することができる。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)
保健物理 44
ページ: 271-273