自治体の津波防災対策の現状把握 東南海・南海地震に伴う津波によって被害が予測されている三重、和歌山、大阪、兵庫、高知、徳島の各府県・政令市の津波防災対策の現状を調査した。その結果、津波防災として最も効果的である土地利用規制は、規制の根拠や個人財産の問題により進んでおらず、今後もその実現は非常に厳しい状況であることが分かった。1960年の伊勢湾台風高潮災害を契機に、東海地方で条例によって建築規制を試みた事例があったが、それも守られておらず現在ではその存在すら忘れられていた。一方で、避難ビルやタワーの建設はここ数年活発に実施されており、今後も継続することが見込まれる。しかし、一時避難所としての避難ビル・タワーの建設は、市街地への氾濫水の排水困難などにより住民が安全な避難所へ移動できない孤立ビルを生じさせる可能性かおるが、その対策は進んでいないことが分かった。また、避難行動支援では、要援護者対策が民生委員、自治会・自主防などの関係者で議論されるようになってきていることが分かった。なお、この調査で構築した自治体とのネットワークは、東南海・南海地震を見据えて長期的に防災研究を実施していくための重要な成果である。 スーパー広域災害の特徴(四川調査) 四川大地震による被災地を調査した。同地震は300kmを超える断層を持ち、津波は伴わないものの被災地の広さでは東南海・南海地震と同規模であり、東南海・南海地震のリーディングケースと位置づけられる。本調査により、被災地面積が巨大化すると救助活動や道路などのインフラの仮復旧、報道に必要な人的・物的資源が不足し、数10kmオーダーの震災時とは全く異なる被災社会が生まれることが分かった。例えば、道路は長期にわたり危険な状況が続き、その間の斜面災害などによる被害拡大などの要因で仮復旧に要する日数は被災地の面積に直比例ではないことが予想される。
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