この年次では、おもに美術作品をコーパスとしながらシュルレアリスムの造形作品に固有な「言表行為」を語るための批評方法確立が目指された。シュルレアリスムに固有な問題系をふまえながら造形作品の問題を再考するために、一年目に得られたシュルレアリスムのイメージ論と付き合わせることによってそれら双方を相対化し問題を多角的にした。またシュルレアリスムの射程をこれまでの美術史における批評の問題点とともに明確化するため、これまで例えばセザンヌといった対象を語るときに美術批評が用いてきた常套句を批判的に検討しながら、それを通じてシュルレアリスムのイメージ論と造形作品に固有な問題を考察した。 さらに最終年度にあたるこの年次では、これまでの研究で得られた成果の総合を目指すとともに、対象をシュルレアリスム以外の領域にも開きながら、表象をめぐって現在展開されているアクチュアルな議論の場へと問題を接続していく努力がなされた。 これらの作業を通じて、現代の言語芸術に提起されたイメージの問題の複雑な諸相を明確に描き出し、この成果を、研究の一年目に発表された論文とあわせながら、ひとつの研究業績としてまとめあげ発表した。
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