研究概要 |
本年度は、来年MIT大学出版会から出版予定の単著、"The Great Migrator: Robert Rausch enberg and the Global Rise of American Art, circa1964"の執筆に多くの時間を費やした。原稿は英語で執筆しているため、12月から1月にかけてネイティヴの編集者にコピーエディット(英語のプルーフ・リーディングと注などの形式のチェック)を依頼し、初稿を完成させた。2月にはこの原稿を査読にかけ、アメリカ美術の研究者から出版水準に十分に達しているとの評価を得た。現在、査読者のコメントに基づいて最終稿を準備している。 また、本研究課題である戦後の日米美術交流についても精力的に調査・研究発表を行った。8月に大阪大学とサンパウロ大学が共同開催した国際シンポジウムで「ポスト・コンフリクトの日米美術交流」と題した発表を行い、ロックフェラー一族の日米美術交流への支援について、その今日的な意義も含めて明らかにした。9月にはニューヨークに赴き、近代美術館のアーカイヴで1965-67年にアメリカ各都市を巡回した「新しい日本の絵画と彫刻」展について調査するとともに、市立図書館では美術雑誌に掲載された日本人作家の展評などを収集した。 2月には再びニューヨークに調査旅行に出かけ、9月に引き続き対米生活の長い作家達(篠原有司男、杉浦邦恵、桑山忠明、中川直人など)にオーラル・ヒストリーの手法を用いたインタヴューを行った。また、現在グッゲンハイム美術館で開催されている"Third Mind: American Artists Contemplate Asia"という展覧会の展評をアメリカの代表的な美術雑誌"Art Journal"に共同執筆することになった。来年度は単著の出版に向けて最終調整を進めるとともに、積極的に調査結果の研究発表を行う。
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