現在、ブラジル籍の数は外国人登録者数の第3位を占めるまでに増加している。こうした中、本研究では、大学を中心とした教育機関を対象とし、多言語・多文化社会に移行しつつある日本社会におけるポルトガル語教育の現状と課題を明らかにすることを目的としている。平成20年度は、先行研究の慨観の後、アンケートの作成を試みた。ポルトガル語を対象とした先行研究については皆無に等しいことから、中国語と韓国・朝鮮語に焦点をあて、大学における中国語教育、韓国・朝鮮語教育の実態に関する論文を分析した。中国語教育、韓国・朝鮮語教育を対象としたのは、ドイツ語教育やフランス語教育などの外国語教育と教育の意味合いが大きく異なるためである。つまり、中国語や韓国・朝鮮語を母語とする者は日本社会の中に「生活者」として根付いており、これらの言語は社会の中で日本人とそれらを母語とする者が交流するための手段として位置づけられているという点である。そして、ポルトガル語教育もこのような「コミュニティ言語」としての外国語教育という点で中国語、韓国・朝鮮語教育と類似の性格を持っており、上記の先行研究の概観は異なる言語を対象としたものであるとはいえ、大変意義深い。アンケートについては、上記の先行研究の中で用いられた項目を検討し、必要に応じて修正を加えながら、研究目的に適するものを作成するに至った。そうすることにより、「コミュニティ言語」という類似の性格を持つ言語どうしの調査結果を後に比較対照させることができ、またそのことがポルトガル語教育の特徴をより際立たせることを可能にするという役割を果たすからである。21年度はアンケートの実施と結果の分析を中心に研究を進める予定である。
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