二年間の研究によって、大きく二つの成果を得ることができた。第一に、先代旧事本紀の研究データベース作成である。これまで、古事記・日本書紀といった、上代の電子データは多く存在したものの、先代旧事本紀のそれは存在せず、本研究により、きわめて確度の高いデータを作成することができた。現在は一般の公開を予定していないが、近いうちに、より利用しやすいデータとして研究者間で共有できるものとしたい。第二に、日本紀言説以前およびその周辺にある資料の在りようがある程度明らかになったことである。特に、先代旧事本紀の最善本である、天理図書館吉田文庫本に近接する、吉田家神道説において新たな知見をえることができた。これについては、継続して研究を行う予定である。さらに、先代旧事本紀と対照することで、改めて先行資料の語りの在りようが明らかになるなど、当初の目的以上の成果を得ることができた。
|