1. ニューヨーク市内にある複数のモスクを訪問し、調査を行った。ネイション・オブ・イスラム(NOI)の元メンバーや、その後NOIとは異なる方向で運動を展開したアフリカ系アメリカ人ムスリムたちのなかで、とりわけ1960年代を経験してきた者に聞き取り調査を行った。インタビューにおいては、映像作家であるサリーム・アジズやシェリー・ウェルドンの協力を得て記録を残し、今後も被調査者との連絡を取り合い長期的な信頼関係を築いていくことができるよう配慮した。これは、ニューヨークという地域で新たにフィールドワークを行っていくうえで不可欠であるだけでなく、今後ますます求められていくであろう、研究の双方向性の確保という点でも重要性が高い。 2. ニューヨークでこれまで行ってきたフィールドワークで培ったネットワークを用い、さらなる調査を行った。第一に、これまでのフィールドワーク中に出会ったムスリムたちのその後の変化について聞き取りを行った。これは、ハーレム自体が再開発やコロンビア大学によるキャンパス拡大等によって現在劇的な変化の波にさらされているなかで、その場所に生活する彼らがどのような対応をとっているのか(取らざるを得ないのか)を知る上でも重要であった。第二に、ニューヨーク在住の社会学者、テリー・ウィリアムズやウィリアム・コーンブルムと複数回に渡って研究打ち合わせを持ち、これまでの成果を確認するとともに、今後の調査の方向性についても意見を交換した。第三に、ニューヨークという都市の特殊性をさらに明らかにするために、コロンビア大学や公立図書館等で資料収集を行った。
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