研究概要 |
アメリカ合衆国での主な調査先は、ウィリアム・シェンストンの手稿を多数所蔵するエール大学図書館(The Beinecke Rare Book and Manuscript Library)とした。事前調査により、既存の手稿資料リスト(Index of English Literary Manuscripts, Vol.III, 1992)に未記載の資料が多数存在することが判明したため、直接現地を訪れて司書の協力のもと資料の閲覧と複写を行った。合衆国内のその他の手稿資料の所蔵機関(The Huntington Library, Shakespeare Library, Wellesley College Library)については資料の複写が可能であることが判明したため、依頼を行い資料の分析を行った。今回の一連の資料調査により、特にシェンストンの知人(Joseph Spence, Thomas Hull)や同時代の訪問者(Thomas Parnell)による庭園の訪問記録の原本にあたることで既刊の二次資料における記述との対照作業を行うことができた他、書簡集等による出版のなされていない未刊の一次資料に存在する空白を埋める作業を行うことができた。また、前年度に現地調査を行ったイギリスのサーキット・ガーデン(ストアヘッド庭園、プライオリー・パーク、ペインズヒル庭園)についても引き続き文献調査を行うことで、リーソウズ庭園と各サーキット・ガーデンの間にシェンストンの文学的・芸術的交友ネットワークを通じた交流や接点が存在した可能性が高まった。こうした交友関係は、既存の庭園史・文学史研究の文脈では見落とされがちなものである。今回の調査により明らかとなった新たなつながりや接点の存在をもとに、研究対象とする複数のサーキット・ガーデンの間に存在する様々な相違点・相似点の比較・考察に資することが期待される。
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