本年度は、研究の深化および成果発表のため、論文作成と学会発表を中心に行った。アメリカと日本の、それぞれの「環境意識」というものを、「森」の表象を中心に比較する本研究は、純文学/サブカルチャー/表象芸術という垣根をとりはらい、環境文化論というまだ新しい理論の拡充に貢献した。なかでも、学会発表を行った「日本の森のあいまいな私」では、ポストモダンという概念が、いかに日本の環境文学に接続しうるか、また、接続しうるとしたらいかに広範囲のジャンル横断的な批評的視座が持ちうるか、ということを検討した。純文学、アニメ、ライトノベルというジャンル横断の本発表は、日米の日本文学者(立教およびコロンビア大)との活発な議論につながった。なお、これは次年度である22年度内に、活字化される。 同時に、これらの日本環境表象文化研究を、本研究の「比較環境文化論」へと発展接続させるべく、ネット上に設けたサイトでは、大江健三郎論からアメリカのビート世代の接点を論じ、そしてトマス・ピンチョンの想像力へとつながる議論を、継続的に報告している。ここでは、研究実施計画のもうひとつの肝である、「虚構の森」と「現実の森」の視覚的な比較を、ネットならではの図像・地図へのリンクを充実させることにより、研究成果をより分かりやすく、一般レベルの理解をも促進するものとなっている。そして、本研究の「トポロジカルな比較環境文化論」は、これらネット上での議論・報告をふまえた上で、最終的には来年度以降の研究論文として発表されていく。
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