(1)『往生要集鈔』を所蔵する2寺院の調査・撮影の実施。 京都東向観音寺蔵『往生要集鈔』(3冊)と、京都檀王法林寺蔵の『往生要集記』(全8冊、内容は『往生要集鈔』)の実見調査、加えて、デジタルカメラによる撮影を専門業者に依頼し、共に順調に遂行した。この作業は書誌的な基礎作業であり、かつ課題として挙げている諸伝本の対照表を作成する上において、必須の作業である。この基礎作業が1年目にあたる当該年度に計画通り実施できたことは望ましい結果であるといえる。 (2)『往生要集鈔』と『往生要集義記』の諸本対照表の作成。 既に入手している『往生要集鈔』と『往生要集義記』の諸本(7種)にこれら2種の写本を加えて、対照表の作成を計画しており、現在計画通り6本の対照表作成をほぼ完成し、比較検討に着手している。今年度は、残り3本の対照表を作成中である。当初この対照表作成の意義は、『往生要集鈔』と『往生要集義記』の2系統の相違の全体像を浮かび上がらせることを意図していた。ところが『往生要集鈔』の諸本中においても、増広がしばしば見受けられることが判明し、新たな展開を迎えている。このように特に大部な著作の場合、まずは視覚的に増広を確認できる対照表の作成は、比較検討の際に有効である。 (3)印度學佛教學学会の学術大会において、口頭発表ならびに論文を寄稿。 良忠は、法然(1133〜1212)の弟子である弁長(1162〜1238)を師とする。法然と良忠(1199〜1287)の間に位置する弁長の『往生要集』理解を考察することは、『往生要集』理解の変遷、特に今中心テーマとして扱っている良忠に対する、弁長の影響を窺う上で、重要なテーマである。
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