研究概要 |
中部北域にあるHue市周辺域での踏査・測量調査、博物館収蔵遺物調査などをおこなった。特に、Huong Tra県のHoa Chau城の測量調査集中し、正確な城郭の様態を明らかにしつつある。この調査を通じて、Hoa Chau城がチャンパ特有の都城形態をもち、規模としては中部ベトナム最大であることを明らかにした。これに基づき今後中部ベトナムの比較都城調査が可能となった。また、収蔵品調査を通じて、オケオ文化や中国の文字文化の浸透なども明らかにできた。 また、比較地域として、北部南域のNinh Binh省、Thanh Hoa省と中部南域のBinh Dinh, Khanh Hoa省を選び、遺跡踏査、博物館収蔵品の調査を行った。前者ではホアルー遺跡の10世紀の瓦、陶磁器、ドンソン遺跡出土の先史時代末から初期歴史時代の瓦、土器、さらにはヘーガーI式銅鼓を研究し、後者では、チャンパ時代前半期の瓦、建築装飾、ヘーガーI式銅鼓を研究した。さらには中部ヴェトナムの後背域にあたる東北タイの各博物館での収蔵品調査も行った。また、サーフイン文化の埋葬遺跡であるQuang Nam省HoiAn市のAn Bang遺跡の出土遺物資料のデータ整理を行い、デジタル資料化を行った。こうした比較研究調査により、紀元1000年紀の中部ベトナムは、想像以上により南に存在したチャンパからの様々な文化的影響が強いことが明らかにされつつある。また、先史時代末においては北部ベトナムの南域で生産された銅鼓が、中部ベトナムさらにはその他の東南アジア地域にかなり限定された時間のなかで運ばれていることが明らかにされた。
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