平成20年度は、資料収集およびフィールド調査から以下の研究成果を得、その一部を国際フォーラム(中国内モンゴル自治区フフホト市)、第15回シンポジウム「中国乾燥地における緑化技術とその将来」V(日本緑化工学会乾燥地緑化研究部会)、第1回中国西南文化と環境に関する高級学術フォーラム(中国湖北省三峡大学)にて報告した。 その大まかな内容な下記の3つである。 1.従来、干ばつに対する牧畜民の対応は移動であった。中国内モンゴル自治区ウーシン旗では干ばつの進行とともに定着化のなかで、比較的豊富な地下水を利用した灌漑農業による飼料生産とブタの肥育と繁殖が進んでいる。この理由は、ウーシン旗が天水農業、ブタの肥育および食生活におけるブタ肉の利用という社会的文化的な背景をもつからである。他方で、内モンゴルの多ぐを占める地下水資源が限られている他地域での定着化の進行は飼料の購入による経費の拡大、もしくは、家畜数の減少によって牧畜民の貧困化をもたらす危険性があることを示唆している。 2.砂漠化認識とその対策において、政府と地元住民の間に自然環境と家畜をめぐる認識の差を植林ボランティアの事例および環境政策の事例研究から明らかにした。 3.生態移民政策に関しては、地方政府が独自に補償金の支給、実情にあわせた放牧管理の推進、新たな農地開墾の禁止、河川水による牧地の灌漑などを実施している。しかし、地元政府の対応は中央政府の政策施行とのはざまで大きくゆれており、地元政府や現地に暮らす人びとの視点を取り入れた環境政策の立案の必要性が改めて明らかになった。 今後も学会、論文等で随時発表する。
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