本年度は、昨年度の予備調査を踏まえて、フィジーの国立古文書館、南太平洋大学パシフィック・コレクションにての資料収集と研究対象であるダク村落において若干の調査をおこなった。フィジーの政情不安のため調査許可の取得に時間がとられたが、これまで知られていなかった歴史的資料をダク村落の関係者から入手して、その読解作業を進めることができた。 成果の公開については、日本文化人類学会、アジア経済研究所共同研究会「グローバル化における太平洋島嶼国家」、共同研究会「生の複雑性をめぐる人類学的研究--『第四世界』の新たな記述にむけて」、共同研究会「オセアニアにおける独立期以降の<紛争>に関する比較民族誌的研究」の場で研究発表を行った。これまでの研究を「第4世界」などの別の視角からとらえ直すことで、理論的に昇華する作業を行った。 学術論文は『季刊民族学』などのほか、図書として『オセアニア学』『グローバル化のオセアニア』に論文が掲載された。また、以上の成果と連動しつつ、本年度より国立民族学博物館にて共同研究会(「オセアニアにおける独立期以降の<紛争>に関する比較民族誌的研究」)を主宰することとなった。 それ以外の短い文章は、『月刊みんぱく』『毎日新聞』などの新聞雑誌と、『みんぱくe-news99』などの媒体に公表し、ひろく社会還元にも努めた。 なお、昨年度研究実績として記載した拙著『脱伝統としての開発』により、第9回オセアニア学会賞が授与された。上記以外の実績としては、英語論文を投稿中である。
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