本研究は、20世紀ドイツにおけるヨーロッパ統合運動を、戦間期からの人的・思想的な連続性と断絶という観点に着目しつつ、実証的に研究することによって、積極的にヨーロッパ統合に関与する現代ドイツ政治の思想的・歴史的・社会的基盤を明らかにしようとするものである。本年度の研究実績は、大別して以下の六点である。 1、本テーマに関する先行研究の中で最も重要なコンツェの研究を批判的に検討し、「ドイツ現代史における「ヨーロッパ」理念の諸相-ヴァネッサ・コンツェめ研究によせて」という書評論文を執筆し、『北大法学論集』第59巻第5号に発表した。 2、国内外の図書館活用、さらにドイツ出張を通じて、本研究の中心的な検討対象である、「ドイツ・ヨーロッパ連盟」関連の基礎的な資料を収集した。 3、本研究の中で重要な位置を占めるヴィルヘルム・ハイレの戦間期の思想を総括し、「『中欧』から『ヨーロッパ合衆国』へ? -ヴァイマル期におけるヴィルヘルム・ハイレの欧州統合思想」という論文にまとめ、ドイツ現代史研究会編『ゲシヒテ』第2号に発表した。 4、また、本研究の問題関心の底流をなす近現代ドイツにおける「中欧」概念について、博士論文をもとに北大政治研究会で報告を行った。 5、ヨーロッパ統合史研究に関しては、共同執筆で参加した遠藤乾編『原典ヨーロッパ統合史-史料と解説』(名古屋大学出版会)が公表された。 6、さらに戦後ヨーロッパ史について、ジャット『ヨーロッパ戦後史』の書評を『論座』に執筆した。
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