研究概要 |
本研究の目的は、親密な二者関係の間で操作がどのように生起しているか、また、操作が病理的な二者関係の形成・維持に果たす役割について検討することであった。パートナーに対する操作を測定するパートナー関係維持方略尺度短縮版(Mate Retention Inventory short form ; Buss, Shackelford & McKibbin, 2008)を邦訳して、質問紙調査を実施した。大学生534名を対象に2回、一般成人512名を対象に1回の計3回の調査を行った。現在・過去の恋人や配偶者に関して、パートナー関係維持方略尺度、交際・婚姻期間、相手への暴力の頻度、関係満足度、相手との心理的距離などの項目からなる質問紙を実施した。パートナー関係維持方略尺度は十分な信頼性・妥当性を有していた。パートナー関係維持方略の生起頻度を検討したところ、調査対象者の20%~40%が、相手がどこにいるか確認する、相手の時間を独占する、別れると脅す、携帯を見るなどの否定的な関わりを過去に一度は行っていた。次に、初期の関係性要因がパートナー関係維持方略の使用を高めて、その後の暴力につながり、最終的に交際・婚姻期間や関係満足度などに影響するというパス解析モデルを構成して検討した。その結果、初期の関係に満足しているほど、パートナー関係維持方略を多く用い、その行動がエスカレートして暴力につながることが示唆された。また、攻撃的な内容のパートナー関係維持方略および暴力は交際期間に正の影響を与えており、むしろ相手との関係性を維持していることが示された。よって、恋人・配偶者への操作は、エスカレートすると暴力につながり、関係性を維持することが明らかとなった。今後は、操作から暴力へ発展するにはどのような要因が影響するのかについて明らかにすることで、暴力に至る前の操作の時点で介入する方法について検討する必要がある。
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