本研究はボリビアの特別支援教育現職教員の持つ価値志向の検討を目指している。本年度は(1)ボリビアの教育制度および教員研修制度に関する情報・資料の収集(2)JICAの研修で来日した研修員が作成した資料の収集と分析、(3)本年度の研修員に対するインタビューによる情報収集と(4)アンケート調査を行った。(1)ボリビアの特別支援教育に関する情報は非常に少なく、JICAの協力隊や専門家の報告書とJICAの雑誌がそのほとんどであった。ボリビアの高等師範学校や教育大学では今まで障害児教育の専門家養成を行ったことがなく、障害児教育の位置づけは非常に低いことが分かった。非政府組織の障害児教育の専門養成の研修が存在するが、それを受けても専門家として政府に認可されないこともわかった。よって特別支援学校で働く90%以上の職員が何の資格も持たないで従事している。(2)2006年度から開始したJICAの課題劉地域研修障害児教育コースにおいてボリビアの研修員が作成した資料を収集した。特別支援教育現場に携わる研修員は研修後も、研修で立てたActinPlanの実行に意欲的に取り組んでいることが分かった。しかし、教員養成システムやカリキュラムの組織化に関する活動は難を示している。(3)(4)面接調査及びアンケート調査から、本年度の研修員は自主的に特別支援教育に携わることになったのは私立の専門学校を卒業した研修員一名だけであり、その他の研修員は上司の命令や、他に選択肢を与えられなかったことから携わることになったことがわかった。特別支援学校では通常学校の半分程度しか給料がでないため、他に仕事の選択肢がある場合には、やめる教員が多いこともわかった。しかし、JICAの研修に参加する現職教員は責任を持って特別支援教育の普及に今後も努め、学内での授業研究を通じて教員の質を上げていきたいという意欲を示していることと、帰国後も具体的な活動を進めていることがわかっている。
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